最善か無か
「最善か無か」。創立以来、スローガンとして掲げられてきた言葉。メルセデスベンツという存在を理解するのにこれほどわかりやすいメッセージはない。また、ある自動車ジャーナリストは「ドイツで愛され、そして尊敬されている自動車メーカーはポルシェだけである。BMWは愛されているが、尊敬はされていない。メルセデスは尊敬されてはいるが、愛される事はない」と言っているが、その発言もメルセデスベンツというクルマのキャラクターを上手く言い当てているような気がする。
世界中で高級車の代名詞として語られきたメルセデスベンツ。しかし冷静に考えてみれば、フェラーリのような優雅さ、ジャガーのような繊細さ、マセラッティ、アストンマーチンのような華麗さ、ベントレー、ロールス・ロイスのような芸術性を持ち合わせているわけではない。しかし、「動く機械」として世界最高の技術と完成度を誇る工業製品であることは間違いない。それこそがメルセデスベンツの長所であり、またときに欠点であるのかもしれない。
1990年代中盤以降、利益率向上を目指し、コストダウンによる品質の低下が顕著となった時期があったことは事実だ。僕自身、W107という名車を所有していたこともあって、「今のベンツとは違うオーラ」のようなものを確かに感じとり、近年のラインナップには見向きもしなかったこともあった。ネオ・クラシックカー・ブームと言われるように、70年代から80年代にかけてのオールドカーの人気が再燃している今、当時のメルセデスベンツ車に、クルマに対する憧憬と畏怖にも似た気持ちを抱き、手にする人もいるだろう。レーシングカーのように高性能でもなければ、斬新なデザイン性を持っていたわけでもない。しかし、頑丈な金庫のようなボディとか、ロングドライブでも疲れ知らずのシート、マニュアルなんか見なくてもすぐに理解できる計器類、目を閉じても安心していられるような直進性と安心感。カタログのスペック表には決して現れない部分が、このクルマを手にした人には自然と伝わってくる。
僕らは夢を見る。憧れだった古い車を手にし、新車だった頃のような最高の状態になんとか近づけていく。あるいは、少々無理をしてでも、豊富なラインナップの中から、自分の相棒を手に入れる。できるだけ往年のスピリットやスパイスを感じさせてくれるクルマならなおさらいい。
現在、多くの車種を抱える、グローバルな量産メーカーのひとつとしてクルマを作り続けるメルセデスベンツ。さまざまな制約やきびしい条件の中で、その栄光の歴史とメッセージをどう継承していくのか。オーナーの一人として興味は尽きない。 |

クルマに詳しくなくても、誰もが知っているスリーポインティッドスター。
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